表情豊かな穂高の山並みのかたわら、豊かな自然とともに、私たちは仕事を続けてまいりました。そして、2000(平成12)年、創立30周年を迎えるにあたり、次の世紀に向けてさらに創造性の高い精緻な仕事をめざすため、私たちは新たな出発点を求めました。
私たちのめざす最高の精度の追求、そのための環境の整備は、それだけでは単なる技能の探求に終わってしまいます。その先にある本当の技術を求めるとき、私たちはそこに強い意志と豊かな感性が不可欠であると考えました。技術開発に関わる者がいつでも、こうした強い意志や豊かな感性と出会える場所をつくりたい、こうした願いから生まれたのがこの≪IIDA・KAN≫です。
この≪IIDA・KAN≫ではその名前の示すように、飯田善國の作品をご覧いただきます。
戦後の日本を代表する独創的な彫刻家のひとりとして、さらに個性的な詩作や鋭い視点からの美術評論でもひろく知られる飯田善國ですが、そのアーティストとしての出発点は油彩による絵画にありました。当館での収蔵・展示の中心は1950年代、若き日の飯田善國による絵画作品です。
荒々しいまでに強い意志で豊かさへの道を模索しはじめた1950年代はまた、戦争の傷跡からの治癒を求め、社会も個人も苦闘した時代でもありました。この≪IIDA・KAN≫に展示された作品を通じて、飯田善國の創造のための強い意志や鋭い感性と同時に、そこに色濃く投影されているひとつの「時代精神」を、地域の方々をはじめひろく多くの方と共有することができれば幸いです。 |